掘り炬燵、ローテーブル製作

掘りごたつ ローテーブル

 

東側の大きな掃き出しの窓を開け放って庭の枝垂れ梅を眺めていた。時折、小鳥たちが飛んできて、しばらく羽を休め、また飛び立ってゆく。この家を立てる前からそこにあったという枝垂れ梅。この家の設計士はこんな眺めを想像して、ここに和室を作ったんだなということがよくわかる。

こんなにいい部屋だったのかと改めて思う。部屋そのものが良いのはわかっていただけれど、部屋に中心ができることで、ゆったりと居座ることができるようになった。これまでにも何度もこの部屋には来ていたのに味わったことのない感覚だった。

 

 

ご家族で麻雀をはじめたとのことで、和室に長時間座っていられるように堀り炬燵をつくりたいとのご相談をいただいた。

当初お客様は、和室の床を一部抜き、堀り炬燵にしてそこに自動麻雀卓を置くことを検討されていた。

でも、

と思った。この家に自動麻雀卓は絶対に似合わない。

HALF MOON設立の年に出会って以来、まるで親戚のように応援していただき、お付き合いさせてもらっているお客様。ものに対する、生活に対するこだわりの強さをよく知っている。自動麻雀卓には反対した。

もちろん、作り手のエゴで家具を提案すべきではないと常々考えている。もしこれがあくまでも麻雀中心のお話であれば、それはそれで尊重すべきだと思う。だけど、この家の生活にはどう考えてもそれは似つかわしくないと思えた。

 

結局、床を抜いての掘りこたつ工事と合わせて、ローテーブルも製作させていただくことになった。

障子を開け放つとダイニングからもつながる和室。すっきりとした、シルエットの綺麗なローテーブルが似合うと思った。

 

 

 

 

 

掘りごたつ ローテーブル

 

掘り炬燵を作って以来、麻雀だけでなく、和室で過ごす時間が多くなったという。この家を建てて5年が過ぎ、これまであまり使ってこなかった和室を楽しんでいるという。家具が入ることでその部屋がより良く生きてくれたら、それは理想的なあり方だと思う。

 

takashi

 

ナラ材ダイニングセット

ナラ ダイニングセット

dining table:1500 x 850 x h700 ナラ オイルフィニッシュ  01 chair : ナラ オイルフィニッシュ 本革張り

 

最初にお問い合わせの電話をいただいたときのことを印象深く覚えている。

去年の初夏、数日の休みを取って北海道蘭越町の及川農園を訪ねていた。

及川一家とのとても素敵な夜を過ごした翌朝、みんなで畑を見て回っていた時、僕の携帯電話が鳴った。それは工房からの転送電話だった。羊蹄山の見える広大な畑の中で、ダイニングテーブルに関するお問い合わせ。頭と体のいる場所がちぐはぐで、何を話したかもほとんど覚えていない。ただ、なんとなく長いお付き合いになるような予感がしていた。最後にお伺いしたお客様のお名前と電話番号を、メモを取る紙もペンもないまま、畑の真ん中で必死に反芻して記憶したことだけはよく覚えている。(幸いその記憶は正しかった。)

 

それから2ヵ月後の工房オープン日にふらりとご夫婦で工房にお越しいただき、初めてお会いすることになった。もともとはご自宅マンションを全面リフォームするにあたり、ダイニングを中心とした家具を探していたところ、たまたま雑誌で見かけたhalf moonのキッチンスツールが気になってお問い合わせをいただいたとのことだった。最初は、奥様に「連れてこられただけ」という風情だったご主人が、展示品の01チェアに座って、オリジナルのダイニングテーブルに着き、しばらく話していると突然「気に入った」と一言仰っていただいたのがとても嬉しく、印象的な瞬間だった。

後日、お客様のマンションにお伺いしてテーブルサイズ、樹種等を最終決定し、ダイニングテーブル、01チェア2脚、ベンチ、キッチンスツール2脚をナラ材で製作させていただくことになった。

 

お会いするたびにお2人のこだわりの強さが伝わってきた。作りにも興味を持たれており、製作中にもお2人で工房にお越しいただいた。電車移動のお二人、駅まで迎えに行きますよ、とは言ったものの、僕のボロボロのワーゲンバスに3人で横並びで乗っていただくことになることだけが申し訳ないなと少し気がかりだった。でも、そんな心配をよそに、それはそれで結構楽しんでいただけたようだった。ちょっと日常を離れて、変な車に乗って畑道を走り、竹林に囲まれた小さな工房へ。椅子の笠木が削られていくところを見て、まだ形になる前のダイニングテーブルに触れる一日。そんなこともこの家具たちを通して時々思い出す一つの風景になってくれればと思う。

 

手作り家具

 

手作り家具

 

手作り家具

 

ナラ ダイニングセット

 

納品後、奥様からこんなご報告をいただいた。夜、仕事から帰宅すると、いつもは自分の部屋にいる大学生の娘さんがダイニングにいたという。とても素敵な話だと思う。この仕事をやっていて良かったと心から思える瞬間だった。

 

引き続きソファ製作のご依頼をいただいている。こちらも独立された息子さんへの想いから始まったお話。製作がとても楽しみだ。

 

takashi

 

 

HOUSE PROJECT 上棟編

 

HALFMOON FURNITUREが設計デザインを担当している家が先日上棟致しました。

 

何もなかった土地に新たに家を建てること、そしてここから住まうご家族の生活がスタートすることを想像するだけでワクワクする、晴れ晴れしい気持ちになります。

 

昨年の夏にここの土地を見て、敷地の特性について考えたこと、ご家族の大切にすることをヒアリングして形にしていったことが今、職人さんの手で実物の形になりました。そして、この箱がこれから機能を持ち始めます。

 

今回の家づくりは家具や建具から、手摺や窓枠などの建築に付随する細かな部分までデザインし製作させていただきます。

先日、設計と家具製作を担当する立場として、担当の大工さんともじっくりと打ち合わせをさせて頂きました。家づくりは普段の家具作りとは異なり、色々な職人さんとの連携が大切になります。

いつも私たちがものづくりで大切にしている「対話」を今回も大切にし、それぞれの立場から意見を出し合い、チームとしての家づくりをしていきたいと思っています。

 

これからいよいよ家具作りもスタートです。

一つ一つを丁寧に、取り組んでいきます。わたしたちも完成がとても楽しみです。

 

kumiko

 

 

 

 

 

床の間ケヤキ板再生

ケヤキ板 リメイク

 

家を手放すことが決まったとき、生前のお母さまの言葉が気になっていたという。
「この床の間の板は良い板だから家を壊す時にはこれで何か作りなさい。」

ゼロからものを作り出すことも素敵なことだけれど、人の想いを形にして残してゆくこともとても大切な僕たちの役割だと考えている。そうやって作られたものは一冊の本のように様々な風景を想像させてくれる。


井の頭公園のすぐ脇のその古い一軒家は取り壊されるのを静かに待っているように見えた。もう随分前に結婚してここを離れて暮らしているご姉妹にとっては生まれ育った場所、たくさんの思い出が詰まった特別な家だった。
玄関の引き戸が閉まる時のガラスが鳴る音、家に入ったときの匂い、廊下の軋む感触、窓の外の空気、そういう1つ1つから僕の知らないいろんな風景が浮かぶんだろうなと想像する。

 

玄関を入ってすぐ右手の和室。その床の間には聞いていたとおり、とても立派なケヤキの板が使われていた。なるべく無駄なく使いたい。傷めないように慎重に、釘を一本一本抜きながら取り外してゆく。この家の一部を再生させて残し、受け継いでいこうというご姉妹のご意向がとてもうれしかった。

 

持ち帰った板を良く見て、どんな材料がどのくらい取れるのかをよく検討した結果、素材の表情を活かした2台のサイドテーブルに作りかえることに決め、製作はスタートした。

代わりの材料は存在しない想いの詰まった板。慎重に木取りをして、無駄なく最大限に使いたい。その製作はとてもわくわくするものだった。古く黒ずんだ板を削っていくと綺麗な木目が現れる。家を建てたときに大工さんが施した反り止めの加工の跡はあえて落とさずに残すことにした。それもこの板に刻まれた一つの歴史であり、その丁寧な仕事が、この板がこうしてここに来て、そしてこれからも生きてゆくことになった一つの大きな要因のような気がしたから。丁寧に加工された材料、そこに刻まれた風景、それを残そうというご姉妹の想い、そこにほんの少しの手を加えることで出来上がった一つの形。

 

 

 

 

 

 

 

ケヤキ板 リメイク

 

この家具があの古い家の風景へと繋がる入り口になってくれるといいと思う。

 

takashi


 

 

 

 

 

 

 

 

HOUSE PROJECT 2

 

HALFMOON FURNITUREが参加している家づくりプロジェクトは、いよいよ着工に向けて進んでいます。

 

オーダーの家具もそうですが、そこに住まうご家族らしい家になるよう、理想や好みなどを色々なお話を通じて感じ取り、具現化することを大切にしています。今は、間取りや外観も決まり、内装材を決めていく作業に取り掛かっています。住まうご家族の風景を思い浮かべながら色々なことを想像し、提案する資料を作ることは、とても楽しい作業です。

 

壁に塗装やクロスのサンプルをペタペタ貼って、朝や夜、晴れの日や曇りの日、何度も何度も見返します。ゆっくりと考えていると、あるとき「これだ」ってはっきりした答えがやってくる。時には直感も大切ですけどね。

 

私の母は無類のインテリア好きで、今思えば実家の間取りはちょっと変わっていたような気がします。

当たり前だと思っていた生活環境が、実はそうではないということは、色々な方が経験されていることだと思います。もちろん私もそうです。小さな子供にとって、育ってきた環境が一つの基準となり、その家で多くのことを感じ取り経験していくと思います。

今回の家の2階には吹き抜けの書斎があります。子供部屋の近くにあるこの書斎は、ご家族の第2のリビングとなり、子供たちが遊んだり、想像したり、色々なことを生み出す場になると思います。とても楽しみな空間です。

 

1/50模型

 

ありがたいことに、造作家具も多く設置させていただく予定です。

生活空間と家具が一致するものづくりをすることが、HALFMOON FURNITUREを始めたときの一つの目標でした。そして今回、家のプランニングから家具製作までの取り組みは、わたしたちにとって初めての経験であり、お客様をはじめ、施工を担当する松尾建設さんや色々な方のご協力のもとで進んでいるプロジェクトです。これから工事が始まっていきますが、普段家具を製作している立場として、また空間作りを提案する立場として、あくまで、住まうご家族のために丁寧に取り組んでいこうと思います。

 

 

kumiko

ナラ材壁面棚板

壁面棚 ナラ材

 

ほんのちょっとしたものだけれど、それがあることでものが生き生きとして、なんとなく楽しい気持ちになることがある。

今回、茅ヶ崎市のお客様からのご依頼で製作させていただいた壁面の棚板もお客様にとってそんな存在になってくれたと思う。

 

ものの素材そのものにどうしようもなく惹かれるというお客様のキッチンには、木や陶、ホーロー、鉄などで作られたポットや急須、器などお気に入りの道具たちが並んでいる。そんな道具たちの居場所を壁面に作りたいとのことから壁面に棚板を作らせていただくことになった。

棚板には特有の虎斑が出るナラの柾目材を使い、その素材を最大限に活かせるように仕上げていく。さらに鉄そのままの風合いを活かした転び止めを製作して取り付けた。

 

それ自体には複雑な構造も飾りもない、たった2枚の棚板。壁面に取り付け、ものを並べてみるとそのものたちの存在が際立ち、生き生きとして見えた。

後でお客様から聞いた話によると、取り付けを終えて僕が帰った後、棚にものを並べながら、うれしすぎて本当に小躍りしてしまったのだとか。

 

自然の素材に、その魅力を最大限に活かすための最小限の手を加える。それが空間の中でものの居場所をつくり、空間全体が生き生きとして、そこで過ごす時間が少し楽しいものになってくれたら。それはとても豊かなものづくりの形なのではないかと思う。

シンプルだけれど、とても印象深い製作になった。

 

takashi

 

 

キッチン収納 ナラ材

キッチン収納 ナラ

 

これまで既製品のラックを並べて使っていたキッチン背面の壁一面をリフォームされたいとのことで、カウンター収納と吊り収納製作のご依頼をいただいた。

 

下段のカウンター収納は向かいのキッチンと合わせた白、天板から上は全てナラ材で製作した。

下段には収納するものに合わせた寸法の引き出しを7杯、壁面にはオープンの棚板を2枚設置、さらに吊り収納の下にはスチールでラックを製作させていただいた。

 

取り付け初日、大工さんの山川さんと一緒に現場に入り、一度壁を剥がして下地を作り直して家具を取り付けていった。

 

キッチン収納 ナラ

 

後日、タイル屋さんが壁面にタイルを貼った後、壁面の棚板とスチールラックを取り付けて完成。

 

キッチン収納

 

リビングから正面に見えるキッチン裏の壁面をリフォームすることでリビング空間全体の雰囲気が大きく変わった。生活観に蓋をするための収納ではなく、あるべきものに然るべき居場所をつくるような家具になってくれたらいいと思う。

 

takashi

 

 

キッチン背面収納

キッチン収納 ウォールナット

W1800 x D450 x H850  ウォールナット材 ウレタンクリア塗装

 

磯子区のお客様からのご依頼で、マンションのキッチン背面にカウンター収納を製作させていただいた。

大まかなご要望を持ってご夫婦で工房にお越しいただいたところからスタートし、その内容を踏まえてデザイン案を作成。その後、材料やガラスサンプル、取手等、なるべくイメージが湧きやすいようにお見せできるものを準備して、より具体的な打ち合わせへと進んでいった。

 

何度かお会いしていくうちにお客様の好みや、どういう部分を大切にされているかが自然と理解できるようになってくる。それを僕たちの価値観とすり合わせながら、細部の寸法設定、木目の選び方、真鍮の仕上げ方など細かい部分を検討していくことで、この出会いの中でしか生まれ得ないものになっていく。

 

キッチン収納 ウォールナット

 

 

さらに、リビングにTVボードを自作されるとのことで、その板の製作を追加でご依頼頂いた。ウォールナットで統一されているインテリアに合わせつつもイメージが硬くなりすぎないように、節の有る少しワイルドな雰囲気のウォールナット無垢材で製作させていただいた。

 

節有りウォールナット

 

これからこの家具たちが日常の中で機能しながら、ご夫婦の生活に心地よく寄り添う存在になってくれたらいいなと思う。

 

takashi

 

HOUSE PROJECT 1

 

 

You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. / 2005 steve jobs

 

 

今、私たちHALFMOON FURNITURE WORKSHOPが参加している家つくりのプロジェクトが進んでいます。今回はプランや外観のデザイン、内部の仕様や造作家具など、お客様が大切にする部分をヒアリングして建物の設計から家具の提案まで担当させていただいています。施工は茅ヶ崎の松尾建設さん。それぞれの立場でアイディアを出し合いながら、作り上げていく家づくりです。

 

私は高校生のときに、坂茂さんの紙の建築(ルワンダ難民キャンプのプロジェクト)や宮脇檀さんの住宅の考え方に興味を抱き、20代後半まで無我夢中で建築を勉強し、仕事をしていました。その中で、もっと作る現場を見たいという願望が強くなり、30代は家具製作を勉強、いまはHALFMOON FURNITUREとして独立し家具を作っています。

 

建築に興味を持ち始めてから約20年。

遠回りもしましたが、今回このような家つくりのプロジェクトの仕事ができることがとてもとても嬉しく、ありがたい気持ちで取り組ませて頂いています。人との出会いや繫がり、経験は目に見えない宝物ですね。。

 

建築だけをやっていた頃とは違う、色々な経験をしたことで見えてくることがあるという確かな実感があり、昔から頭の片隅にあったスティーブジョブスの言葉を思い出しました。点と点がしっかりとした線になるよう、今後も取り組んでいきます。

 

年明けには工事が始まる予定で計画は進んでいます。ブログにも経過を記載しますので、お楽しみに。

 

kumiko

ウォールナット 丸テーブル

丸テーブル ウォールナット

φ1150  H720  ウォールナット無垢材 オイル仕上げ

 

大野圭一建築設計事務所からのご依頼で、マンションのリフォーム工事に合わせてウォールナット材の丸テーブルを製作させていただいた。今回は建築家大野さんのデザイン案を元に製作方法、強度等を検討し、打ち合わせを重ねて詰めていくという進め方。

 

お客様のご要望は、方向性なく囲める一本脚の丸テーブル。大野さんのデザインの狙いは、モダンな雰囲気にリフォームした内装、インテリアに合うように、できるだけ華奢なシルエットにすること。まずそのコンセプトを理解し、共通の認識としてスタートした。製作の立場として、構造的に成り立たないのはやはり怖い。安全を見て部材を太くするのは簡単だけれど、デザインの狙いを形にするためにはそのギリギリを狙う必要がある。部材を細くするために金物で補強するのか、それとも木工的に処理するのか等、何度も話をしながら細部を検討する。大野さんは細部の形状の模型を作って持ってきてくれたり、こちらで組み立て部分の詳細な施工図を描いたり、細かいイメージを共有していく。最終的には金物を使わない、木工的な方法で強度を保てるギリギリの寸法、組み方で製作することになった。

 

丸テーブル ウォールナット

 

丸テーブル ウォールナット

 

丸テーブル ウォールナット

 

丸テーブル ウォールナット

 

違う立場の人が一緒にものを作り上げる場合、目的を共有し、お互いの立場や経験を尊重つつ、緊張感を持って向き合うことができない限り、決して良い方向には進まない。大前提としてそれぞれが誠実でなければありえない。今回はそれがとても自然な形でできて、僕にとってもとても刺激的な製作になった。

 

takashi